ソルジャーロード製作記録

主に製作日記、たまにただの日記。

角魔女王京 レビュー

ネタバレ注意

 

クリアまでのプレイ時間

発売後にいくつかSRPGStudio製のゲームをプレイしたので、まずは1つ目・「角魔女王京」から。

色々と考えさせられる一作……になったというのが自分の中での一番の感想。

 

このゲームの大きな特徴は

「名称が覚えやすいように単語をいっぱい出さないようにした」

「ノベルのようにストーリーはコミュニケーションイベントで観るようにした」

「成長概念をなくし、レベルアップで上がるステータスはHPだけにした」

……というようになっている。

仲間になるキャラクターは主人公・アーマー系(というよりはHPが多い壁役)・弓ネームド一人・モブ弓二体、そしてあとで仲間になるちょっと攻撃力の高い斧使いになっている。

そして付け加えると主人公は「強襲」(今のバージョンでは「強姦」)が出来て一撃で相手を倒せる代わりに非常に弱いユニットになっている(初期だと壁になるどころか即昇天する)

全部で8章+ちょっと難易度の高くなったハードモード8章、計16章となっている。

 

  1. 率直な感想

作者には申し訳ないが、SRPGとしてはあまり出来が良くない……というよりも楽しいところをすべて削ぎ落としているように感じた。

まず第一に育成する楽しみが皆無である点

確かにHPしか上がらないため、ステータスアップで一喜一憂することが無いのは事実なのだが、他のSRPGのように個性が生まれない

速さが自慢のキャラ、攻撃力が特徴のキャラ、クリティカルが出やすいキャラ……といった個性はこのゲームにはない。

このゲーム、戦闘システムも固まっていて

「攻撃必中」

「力・魔力が上がらず、武器も固定なので攻撃力もずっと一定」

「追撃も当然のことながらなし」

……といった具合なので正直なところSRPGというよりも詰将棋となっている。

なので基本的に攻撃力を常に計算して各敵ユニットを撃破していくだけの作業と化しており、楽しみがなかった。

計算ずくで行動させたいユーザーには面白い要素かもしれないが……。

ハードモード解説でもこのようにあるのだが、そもそもこのゲームそのものが「詰将棋」以上になっていないのが問題であって、SRPG特有の育成やランダム要素があれば楽しめたと思う。

余談だが、主人公のプリンは普通にとどめを刺して育てたほうがいい。HPも最初は低いが、結局の所主人公も同じようにHPだけは成長するのでヘイト要員として育てたほうが楽だし、何よりゲームオーバー回避にもつながる。その経験値を上げるのが面倒ではあるが……(これもダメージ計算してコツコツやっていかないといけないし)。

そしてハードモードの方がキャラクターが育っている分、簡単かつかえって難易度が下がっているのでは?というステージもあった(橋を迂回して通るステージなど)。

第2に回復手段が一つしかない点

他のSRPGには「回復手段」自体がないものは確かにある。しかし、そういったゲームの場合は「戦略性」が高い場合がほとんどであり、基本的にHPが多くて頭数が多いという事が多い。そしていかに死なないようにしていくのがポイントとなっている。

……このゲームの場合は自分の場合、回復手段に頼らざるを得ない、というよりも先制攻撃で向かってきた敵を全滅させるような能力がない(成長しないので)のだ。

先述した通り、守備の概念もないため、敵ターンになると必ずダメージが入る。壁役だろうが斧戦士だろうが、一定のダメージが入るので撃破されないようにするためにはどうしても回復手段が必要になる。

で、肝心の回復手段はというと、なんと一つのみ「壁役のキャラが持っているターン回復するアクセサリー」だけだ。

これがどれほどテンポが悪くなっているかは想像出来ると思うが、回復量もさほど多くなく、後半は回復待ちするくらいだ。

せめてヒーラー役にもう1ユニット追加するか、回復アイテムを購入できるようにする(お店の概念もない)かが必要だったのではないか……と思う。

第三にストーリーはやはりコミュニケーションイベントでなくオープニングイベントでちゃんと説明するべきと個人的に思った。

マップごとに色々とストーリーを展開しているのであれば、章の頭に出したほうがストーリーに入り込めるだろうし、状況もわかりやすくなったと思う。

ノベル形式……といえば聞こえは良いが、これはゲームなのでやはりゲームの表現を活かすべきではないかと思った。

第四に敵・ステージに特徴がない

味方が味方なら敵も敵で同じ敵しか出てこないし、同じステータス・同じ攻撃力、そしてボスもまた一定でなおかつ定位置から動くのが一体しかいない(つまり弓ユニットで一方的にボコボコにされる的)。

SRPGであれば名将や軍師、腕利きの剣士や魔道士なんかが出てもおかしくはないが、このゲームはそういったものが一切出てこないのでステージも印象が残らなかった。

最終ステージは戦闘すら無く(意味もなく一般市民を一方的に攻撃できるが、面白いかというと……)、会話のみとなっている(ハードだと謎の同盟軍がいて話しかける相手を攻撃しだすので寄り道せずに会話しに行くだけ)。

 

2.SRPGにとって必要な要素とは?

上記の通り、このゲームから自分は「SRPG」の面白い要素は削ぎ落とされてると感じた。

「武器・育成の要素」

「ストーリーパート」

「戦略性」

「キャラクター」

1つ目の要素は「武器・育成の要素」

SRPGキャラゲー……というのは極論ではあるものの間違っている考えではないと個人的に考えている。このジャンルのはしりでもあるFEも名無しユニットに名前とキャラクターという特徴を与えた事から生まれたジャンルと言われている(確か攻略本で書いていたと記憶している)。

例えば斧使いであればHPと力が高い・技が低い、といった個性を与えればそれもキャラ付けの一つになる。成長概念があれば、このユニットはこの能力が上がりやすく、この能力は上がりにくい、という個性がつく。紋章ビラクのように武器レベルだけ上がりやすい……みたいなネタにもなる。

このゲームの場合はHPは弓キャラより多く、攻撃力が高いだけでしかない(一応スキルもあるのだが、「一撃で相手を倒す代わりに自分も負傷する」という微妙……というか暴発しそうになるのでかえって邪魔なスキルだった)。これではもったいないな、と個人的は思った。

あとは武器。プレイヤーからすると選択肢が少ない=戦略の幅が狭く感じてしまうし、何よりマップ設計や攻略も一本化につながってしまうと感じた。

実際に「敵がこちらに向かってきて迎え撃つ」マップがほとんどであり、範囲内に入ると動く敵も釣り戦法で釣って撃破するだけになってしまっている(釣り戦法もこのゲームの場合ばHPが絶対減って回復も出来ないのでテンポ阻害につながっているのだが……)。ボスもボスで威厳などなくタコ殴りで終始進むのはいかがなものだろうか……(ハードだと同盟軍に一方的にいたぶられて終わるボスも……)。

やはりこうした観点で見ても個性づくりの一環として強力な武器・スキルの付与は必要だったかな、と思う。

第二に「ストーリー」

ストーリー自体は悪くはない……ように見えるが、正直なところ地図や相関図なんかが提示されなかったので自分にはあまり頭に入ってこなかった。この辺りもゲームとしての表現を使えば入り込めるのではないかと思った。

そして先述したとおり、こういったストーリーの部分はきっちりマップ開始時・終了時にプレイヤーに読ませる方がプレイヤーにもわかりやすいし、何より「コミュニケーションイベント」をわざわざ見なくても済む。

そしてこれはSRPGStudio製作者の悩みでもあるのだが、残念ながらプレイヤーの中にはこの「コミュニケーションイベント」を見ない人も多い。そして基本的にはこの「コミュニケーションイベント」は支援会話や情報に割り当てるコマンドなので、物語の骨子でもあるメインストーリーに入れるべきではないかな、と思った。

第3に「戦略性」

第一とかぶる点が多いが、やはりSRPGなら「ユニットの個性」と「武器」「スキル」「地形」といったものを活かした戦いが必要であり、マップ設計もまた考えるべきと思った。

正直、このゲームの地形はあまり良くないSRPGにある「ただ広いだけのマップ」に感じた(作者には意図があるようだが……)。純粋にこれは移動が面倒で敵の到着も遅れるしでテンポの悪さにつながるだけだった(移動力もそんなに高くないし、主人公に至っては「道」しか移動できない。これも戦略性でただめんどくさいだけで正直いらない要素だった)。

そして森や町にも回避や守備が上がるでもなく、何も効果がない。砦のような回復する地形もない(もっともこのゲームのボスがここにいたらボスチクで経験値を貯めるユーザーが出ると思うが……)。

そして「詰将棋」にならないようにある程度ランダム性とユニットの個性を出し、武器によって有利に立てるようにして進めていくのがセオリーかな、と個人的に思う。

第4に「キャラクター」

これは力を入れているように感じたが、やはり「SRPGとしての個性」が弱い分、印象が薄く感じてしまう。

ビジュアル面も全員がメガネ(モブは仮面)であり、髪型以外の変化がなかったため、これは迷う人は迷うのでは?という点も気になった。

あとは単純に登場するキャラクターが少なすぎる。敵はほぼモ武将であり、ストーリーで語られてもSRPG部分では単なる動かない置物でしかないので個性があったものではない。ボリューム面でももっと個性ある敵を出し、演出すべきだと思った。

3.総論

……とマイナス面ばかりがどうしても気になるゲームだった。

R18禁ゲーなので「ゲーム性はいらない!」という人には向いている……と思うのだが、それでも回復関連でどうしてもテンポが悪く感じるので、あまりSRPG部分でのオススメは出来ない一作だった。

H部分は刺さる人には刺さると思う。このゲームのHシーンはコマンドですべて開放できるのでそれで開放し、観るのもいい。

ただ、自分としては「いかにR18ゲーであってもやっぱりある程度のゲーム性は必要」と思い直した。

この作者がもう一度SRPGに挑戦するのであれば、通常のSRPGのセオリーを出しつつ、作者のカラーを出したゲームを出してほしい。