ネタバレ注意
二作目のレビューはフォロワーのBIG魔王氏作の「腰痛戦争」。
領主ウィッキドを中心とした戦記物、というよりは規模が小さいので領主紛争を描いた作品になっている。分岐があり、エンディングは3つあるそうだ(現段階では2つ消化済み。現段階でのレビュー)。
1.特徴
短いながらも要素は多く、工夫してある部分が多い。
「合成ショップ」
「クエスト」
「キャラクター」
の3つが大きな特徴であるように感じた。
「合成ショップ」ではステージをクリアした時に得られるボーナスで合成素材を交換し、それで合成すると言った要素。ただ、問題点もあるのでそれは後述。
「クエスト」は拠点で選べるものであり、クリアすればメインストーリーに絡むものやユニットが仲間になるといったものもある。一部は結構難しいものがあって、一筋縄ではいかないものも……。
3つ目の「キャラクター」だが、どのキャラクターにも特徴がつけられていて、会話もなかなか楽しいものがある。敵もそれは同様で色々と野望や目的がはっきりしているものが多め。
2.合成ショップ
良くも悪くもこの「合成ショップ」のあり方が問題になっている。
……というよりもこのショップで合成できる「ドーピングアイテム」の存在だ。
個人的にはユニットを強化できる要素は好きだ。推しを育てたいと思うときは絶対にドーピングはそのユニットに使うほどだ。
しかし、考えてほしいのは「ドーピング」という要素は現実でもあるように「何か」を壊す。現実だと体なのだが、ゲームの場合だと「ゲームバランス」、そう、ゲームの骨子を揺るがすものになっている。
このゲームのドーピングアイテムは至って簡単に手に入ってしまい、それが悪い方向へ向かわせる。
「力・守備」「魔力・魔防」「速さ・技」と3つのドーピングアイテムがあり、うち問題と思うのが「力・守備」「魔力・魔防」。回避重視ゲーであれば「速さ・技」も十分やばいが……。このゲームでのウエイトは「力・守備」が最も強化して効果があるものだった。
SRPGにおいてドーピングが容易であってはならないパラメータは「守備」「魔防」と個人的に考えている。この2つをこのゲームは容易に上げられてしまうのだ。
なぜこの2つを容易に上げられては困るのか?というと敵の攻撃が通らなくなる、という単純な理由である。別作品になるが、「Put on!」のように攻撃力の規模が大きいゲームだとこの2つはそこまででもない。しかし、このゲームの場合はこの2つを上げれば敵からのダメージを0にできてしまう攻撃力だ。
結果としてヌルゲーになってしまうのが最大のマイナス点だろう。章ごとに拠点の在庫を調整し、ドーピングアイテムを制限すれば面白くなると思ったのでこれは調整してみると良いと思った。そこからも戦略性がうまれ、いかに誰の弱点を克服し、誰の強みをさらに強化するか、につながる。
合成ショップは他にも装備が用意されていて、個性的な装備が多い。これらが使われずにドーピングに振られるのは個人的に惜しいと感じた。
もっとも「ドーピングアイテム」は難易度を低下させる要素でもあるので、慣れたプレイヤーなら縛ってプレイするのも一興である。どうするかはプレイヤー次第……といったところだろう。
3.戦略性
マップごとに色々と工夫が施されており、「旗」システムはなかなかおもしろい要素に感じた。
中でも面白かったのが料理長の息子くん。
仲間がやられていくたびにスキルやステータスがどんどん下がっていく……!という他には類を見ない奴であり、なかなか憎めない輩だった。もったいないのは強化されまくった状態で対面することがない点だろうか……(料理長の息子……お前と戦いたかった……)
先述のドーピングアイテムを縛ったらこのゲームもなかなかの難易度になりそうな予感がする。
4.ストーリー
腰痛から始まり、腰痛に終わる……。
なかなかの変化球ではあるものの、民族間紛争や領地の諍いはこうした小さいきっかけで起こりうるものなので悪くない題材だった。
ただ、ウィッキドはどうにも「悪い領主」?風なのが気になった。野望はあるようだが、どういった野望なのかはわからなかったので、反乱した側のキャラがちょっと薄いかな、と感じた。外伝章でも密輸集団を領主自ら出て潰すほどの男なので、「男気があるいい領主」に見えた。あと外伝章はあまり腰痛要素がなかったのも気になったかもしれない……。
また「領地での小さな争乱」で終わってしまうので、ちょっとさみしくも感じた。野望の領主ならばもっと広げても良かったかもしれない(地図が出てくる場面で顔グラが複数出てくる場面こそあるのだが、フレーバーで終わった。もしかしたら残りのエンディング一つにつながるルートで出るのかもしれないが……)
5.総評
ドーピングアイテムの調整が課題ながらも楽しめる作品だった。
キャラクターのテキストも面白いし、戦略性の引き出しがあるように感じたので、続編があれば遊びたいと思った。
エンディングやユニット紹介も良く出来ていて、見習いたい部分になったし、いい部分もいっぱいある。良いところは吸収していきたいところだ。